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脂質異常症
脂質異常症|喜連瓜破駅徒歩1分、大阪市平野区の内科・泌尿器科もりもとクリニック

脂質異常症とは?

以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、現在は「脂質異常症」という診断名が一般的に使用されています。この変更は、単に血中の脂質が高いだけでなく、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い状態も動脈硬化性疾患のリスクを高めることが明らかになったためです。
このページでは、中性脂肪やコレステロールの数値の異常で治療を検討されている方に向けて、脂質異常症に関する情報を分かりやすく解説していきます。
目次

脂質異常症のメカニズムは?

コレステロールは、全身の細胞膜やホルモン(男性ホルモン、女性ホルモンなど)の材料、胆汁酸の原料として重要な役割を果たします。LDLコレステロール(悪玉コレステロール)は肝臓で作られたコレステロールを全身に運びます。多すぎると血管壁に溜まり、動脈硬化が進行します。一方、HDLコレステロール(善玉コレステロール)は全身から余分なコレステロールを回収して肝臓に運び、血液中のコレステロールが増加するのを防ぎ、動脈硬化を予防します。
中性脂肪は、体を動かすエネルギー源としての役割があります。余分な中性脂肪は肝臓や脂肪組織に蓄えられ、内臓脂肪や皮下脂肪となります。中性脂肪が増加すると、LDLコレステロールが増え、HDLコレステロールが減りやすくなり、動脈硬化のリスクが高まります。
脂質異常症を放置すると、動脈硬化が進み、冠動脈疾患や脳血管疾患などのリスクを高めてしまうため、適切な治療と生活習慣の改善が必要です。

脂質異常症が疑われる人の割合は?
脂質異常症の有病率(%)
(HDLコレステロール40mg/dl未満もしくは脂質異常症治療薬を内服中)
[出展]
2019年国民健康・栄養調査を参考に作表
健康診断で「脂質異常症」と診断される方は少なくありません。
2019年の国民健康・栄養調査によると、脂質異常症が疑われる人(HDLコレステロールが40mg/dl未満もしくはコレステロールや中性脂肪を下げる薬を内服している人と定義)は、40代までは女性に比べて男性の方が圧倒的に多いのですが、女性は更年期以降に女性ホルモンの産生が低下すると、血中コレステロール値が上昇しやすくなり、50代以降に急激に上昇し、男性とほぼ同じ割合になります。

脂質異常症の診断基準は?
[診断基準の出展]
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版を参考に作表
診断基準の詳細について
脂質異常症の診断基準は、主に以下の4つの値で判断されます。
高LDLコレステロール血症
いわゆる悪玉コレステロール(LDL)が140mg/dL以上の場合に診断されます。自覚症状なく動脈硬化を進行させるため注意が必要です。
低HDLコレステロール血症
善玉コレステロール(HDL)が基準値の40mg/dL未満になると診断されます。HDLは余分なコレステロールを回収する役割があります。
高トリグリセライド血症
中性脂肪(TG)が空腹時で150mg/dL以上の場合に診断されます。これも動脈硬化の危険因子です。
高Non-HDLコレステロール血症
総コレステロールから善玉コレステロールを引いた値が170mg/dL以上の場合に診断されます。悪玉コレステロール全体の量を反映する指標として近年重視されています。
上記の脂質異常症の診断基準に該当する方には、個々の状況に応じた適切な治療が推奨されます。治療の基本は、バランスの取れた食事療法と適度な運動療法ですが、場合によっては薬物療法も考慮されます。
以下の要因を総合的に判断した上で、患者様一人ひとりのリスク評価を丁寧に行い、最適な脂質管理の個別の目標値を設定いたします。
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心臓の冠動脈疾患や血栓性脳梗塞の既往歴
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糖尿病や慢性腎臓病などの合併症の有無
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喫煙などの生活習慣
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年齢や性別

脂質異常症の治療は?

これまでの診療において、「自覚症状がないため、しばらく様子を見よう」と考えて治療開始をためらわれる患者様を多く拝見してきました。しかし、脂質異常症は自覚症状がないまま進行し、知らないうちに動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める可能性があります。そのため、健康診断で指摘された場合や、ご家族に心血管疾患の既往がある場合は、お早めにご相談いただくことをおすすめしています。
食事療法や運動療法を中心とした生活習慣の見直しが必要です。また、禁煙指導や節酒指導など、総合的な生活習慣の改善をサポートします。
食事療法
乳製品や肉の脂身など飽和脂肪酸の摂取を控え、食物繊維を積極的に摂取し、必要に応じて減量を目指します。
運動療法
有酸素運動を中心に、週3-5回、1回30分以上の運動を推奨します。
薬物療法
生活習慣の改善だけでは目標値に達しない場合や、高リスクの患者様には薬物療法を行います。
スタチン系薬剤
LDLコレステロールを低下させる薬
フィブラート系薬剤
中性脂肪を低下させる薬
エゼチミブ
コレステロールの吸収を抑える薬
EPA製剤
中性脂肪を低下させる薬
患者様の状態や他の疾患、服用中の薬剤などを考慮し、最適な薬剤を選択し、副作用の少ない治療を心がけています。食事や運動といった生活習慣の見直しは非常に重要ですが、それだけで十分にコントロールできないケースもあります。「生活改善で目標値に届かない場合は、薬を追加することでリスクをより確実に下げられる」ことをお伝えし、治療法の選択肢を柔軟に提示するよう心がけています。
よくいただくご質問について

日々の診療で、脂質異常症と診断された患者様からよくいただくご質問の一つに、「コレステロールの薬は一度飲み始めたらやめられないのですか?」というものがあります。特に症状がないこともあり、薬に対して抵抗感を持たれる方は少なくありません。当院では、まず患者様のリスク(動脈硬化の進行度や家族歴など)を評価した上で、薬が必要かどうかをご一緒に判 断します。必要な場合でも、生活習慣の改善と並行して最小限の治療で済むよう、定期的な見直しを行っています。